復興予算19兆円はどこに使われているのか…その2
復興予算がなかなか被災地に届かない…深刻な事態は命を守る医療の現場でもおきています。
宮城県気仙沼市、震災前から医師の数は全国平均のおよそ半分。医師不足の町を津波が襲いました。35あった医療機関のうち21の施設が大規模半壊の被害に遭ったそうです。1年半たった今でも震災前の規模に復旧した施設はわずか7つ。
気仙沼市で15年間地域医療を支えてきた村岡医師は、診療所を津波で流されましたが地元にとどまることにしました。映像は医療機関の不足に加え、不便な仮設住宅で暮らす被災者たちを映します。村岡さんはそうした一人ひとりのもとに出向き診療を続けています。かかりつけだった診療所が流され今では村岡医師の診療が頼りです。村岡さんは1ヶ月に120件以上訪問診療しているとか。
厚労省の医療分野の復興予算のうち、最も多いのが720億円の地域医療再構築事業。しかし、これは中長期的医療の復興のために使われるのだそうです。医療機関の緊急的復旧予算として使われたのはおよそ160億円の補助金。被災した医療施設を再建するためのものです。ところがその対象は公立病院が中心で民間の医療機関は一部にとどまり、補助率も低いとのこと。
そのため村岡さんのような町の医師は大きな負担をかかえています。村岡さんは別の場所で診療所を建てましたが、その建設費は9000万円。これまで市の委託を受けて休日診療を行っていたため補助の対象になったとはいえ、受け取れるのは9000万円のおよそ6分の1で1470万円。しかも建物の再建にしか使えず医療設備の購入費には使えません。レントゲンなど最低限のものに絞っても5000万円の設備費がかかったそうです。ほとんど自己負担。震災前の補修費の借入れと合わせると借金の総額は2億円にも…。
医師が多額の自己負担をしなければならないため、気仙沼市では6割を超える医療機関が復旧できずにいます。再建をあきらめ県外の病院に勤務員として働くなど、気仙沼を離れる医師も少なくありません。
私たち庶民から搾り取る復興増税が、復興と直接関係のない大型公共工事につぎ込まれ、地元の商店の復興にも、命を守る医療にもほとんどまわらない。復興予算の配分のあり方、優先順位がこのままでいいのか改めて考えさせられます。